スローシネマ ムーブメント

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平垣美栄子(ヒルデガルト・フォーラム・ジャパン 代表)
20数年前に震災にあった後、それまでの順風満帆の生活に、違和感を覚えるようになりました。そうしたなか植物療法に出会い、植物や自然界にあるものを使って人々に癒しを与えた中世の女性、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンに巡りあいました。大きな社会の規制や枠組みを超えて、目の前にあるものをしっかりとみつめ、知る、そのような彼女の丁寧な生き方に心動かされ、ここに誰もが気づくべき真理があると直感したのです。
さっそく、日本ではまだ殆ど知られていなかったこの修道女の研究会を立ち上げ、月に一度の勉強会を始めました。私にヒルデガルトを教えてくれたペーター先生も、2年ごとにドイツから教えに来てくれるようになりました。宗教だから、有名じゃないから、科学的でないから……、当初はほとんど見向きもされない、地道な活動の連続でした。
でも私は出会ったのです。スローを目指す人たちに。より早く、より強く、より大きくという、現代が突き進んでいるのとは、真逆の考え方をもつ人に。
「美栄子さんは、どうしてヒルデガルトに興味を持ったの?」
ナマケモノ教授こと辻信一さんの質問に、私は一生懸命答えました。本当に拙い言葉だったけれど、こうやって理解して、表現してくださる方が、ついに私の目の前に現れてくれました。
人と場所と時間が応援してくれて、美しい映像作品が出来上がりました。ヒルデガルトがそうであったように、この映画も、出会うべくして出会った人々の思いが響きあう素晴らしい作品です。
この映画が私たちの足元を照らし、毎日を、今を、大切に生きていく光になりますように。

辻信一(文化人類学者 / 明治学院大学国際学部教授)
今、ヨーロッパをはじめとして世界各地で新しい合言葉が囁かれています。それは、ヒルデガルト・フォン・ビンゲン。これは、中世12世紀のドイツに生きていた修道女の名前です。ヒルデガルトは自然療法のヨーロッパにおける創始者というふうにも言われていますし、ヒルデガルトの食事法、スペルト小麦を中心にした健康な食事のあり方、そして、フェミニズム、非常に男性優位の、女性に対する抑圧の強かった中世のヨーロッパで、女性の権利というものを高らかに謳った女性としても知られています。そしてエコロジー。今、僕たちが切り開こうとしている新しい時代、エコロジーの時代の先駆者としてのヒルデガルトもまた注目されています。
このヒルデガルトの生涯を追いながら、そしてヒルデガルトが現代世界にもっている意味を探るDVDを今、制作しています。ぜひ、皆さんにも参加していただいて、みんなの力でなんとか完成しました。
「ヴィリディタス-緑の力」
彼女がこの言葉を作ったんです。それは、この地球上の全てのものに備わっている生命の力、生きる力。人間と自然界とが、そして人間と人間とが、そして人間と自分自身がかけ離れてしまった分離の時代を乗り越えて、なんとかもう一度、全てのつながりを取り戻すことができるような、そういう新しい時代に向かって、このヒルデガルトという合言葉を、みんなのものにしたいなと思います。
ぜひ、皆さんご覧ください。