サティシュ・クマール Satish Kumar
現代を代表するエコロジー思想家、非暴力平和運動家。サティシュ・クマールは1936 年、インド、ラジャスタン地方の村でジャイナ教信徒の両親のもとに生まれた。父の死を契機に、死がもたらす悲しみを超える道を模索し始めたサティシュは、9 歳にして出家、ジャイナ教の僧侶となる。18 歳の時、マハトマ・ガンディーの社会的非暴力思想に魂を揺さぶられ、還俗を決意。その後、ヴィノーバ・バーヴェ師のもとで社会変革運動に携わった。1961 年、90 歳の哲学者バートランド・ラッセルが、核廃絶を求める座り込みで逮捕されたというニュースに触発され、サティシュは友人とともに、当時4 つあった核保有国(ソ連、フランス、イギリス、アメリカ)の首都へ、平和のメッセージを届ける平和巡礼に旅立つ。2 年半かけて、1 万4 千キロの道を一銭ももたずに歩き通した。
その後、サティシュは『スモール・イズ・ビューティフル』で知られる経済学者、E.F. シューマッハーと出会い意気投合。1973 年、シューマッハーに請われて、『リサージェンス』誌の編集主幹となる。以来、『リサージェンス』はエコロジー思想の知的拠点として、また環境と平和、科学とスピリチュアリティをめぐる世界的な議論の場であり続けている。1982 年、自宅のあるイギリス南西部デヴォン州に「スモール・スクール」という中学校を創設し、自然からの学び、日常生活の重視などを特徴とする先駆的なカリキュラムで注目を集めた。1991 年には、「シューマッハー・カレッジ」を創設。パラダイムの転換を模索する人々が世界中から集い、学び合う場となっている。
邦訳書に『君あり、故に我あり』(講談社学術文庫)、『人類はどこへいくのか ほんとうの転換のための三つのS〈土・魂・社会〉』(ぷねうま舎)、『サティシュ・クマールのゆっくり問答with辻信一』『怖れるなかれ(フィアノット)愛と共感の大地へ』(以上SOKEIパブリッシング)などがある。